インキュベーターとVCの違いって知ってる?SFCのインキュベーターの方に仕事の魅力を聞いてみた!

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今回のサシモニのお相手はSFC(慶応大学湘南藤沢キャンパス)でインキュベーターをやっている廣川さん。インキュベーターの仕事って何をしているかご存じですか。VCと似た感じかなと思ったら実は全然違うんですよね。VCとインキュベーターの違いや廣川さんが銀行員時代にベンチャーと関わった話等々。半沢直樹みたいな話から、今後のインキュベーターに求められる話まで。今後起業を考えている方は必読ですよ。ぜひご一読ください!

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インキュベーターってなにしてるの?

-SFCでインキュベーターの仕事をしているとのことですが、そもそもインキュベーターってどのような仕事をしているのでしょうか。

ステージによって違いますが、例えば会社をやりたい学生相手には、アイデアに対して実現性があるかどうかについてのブレストや、会社の登記についての相談から保険関係まで細かい分野も含め指導しています。成長していくとVCやエンジェル投資家を紹介したり、パートナーとしてなり得る大企業の紹介もします。出資や融資を受けるにあたっての書類作成等の指導もしますね。元々銀行員だった経験があるので、資金調達周りの話は得意ですよ。
-なるほど。学校内にそんな機能があるなんてSFCの学生は恵まれていますね。インキュベーションオフィスには、どのくらいの会社が入っているのですか。

SFCでは20社くらいが入居しています。半分がSFC関連の会社で、残りは地元の人達や都内から来た人など様々な人がいますね。

-へぇ。SFCに関係ない人でも入居できるわけなんですね。過去にSFCから生まれた企業で有名な会社とか、今注目している会社ってありますか。

有名なところでは昨年上場した面白法人カヤックですね。他に手話通話のサービスをやっているシュアールも知られています。今注目しているのはスパイバーという人工でクモの糸を作る会社。会社を作るかどうかの相談から受けていましたが、当時周りから反対されてばかりいたけど、微生物がクモの糸を作るスピードを上げることにも成功して、これから注目ですよ。

-カヤックがSFC出身なのは有名ですよね。そしてスパイバーもなんだか凄そうです!そういった企業が生まれる瞬間から関わっていくって楽しそうな仕事ですね。

みんな前向きな連中だから、そういった彼等と付き合っているのは楽しいですね。「こういう技術が出来たら楽しい」とか、「こんな問題が解決されれば世の中ちょっと良くなるのではないか」なんて話を日常的にしています。トラブルが発生したときには、みんなで一緒に悩んで解決することもありますね。自分自身が一つのことをやり続けるのが苦手だと思っているから、次から次へと新しいアイデアを持っている人が集まる環境は良いですね。

-おぉ。なんだかメチャメチャ楽しそうな仕事だ。でも、誰でも簡単にインキュベーターになれるってわけではなさそうですよね。ということで、廣川さんの過去の話を伺ってみましょう。

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バブルの後の銀行員

-現在はインキュベーターとして活躍している廣川さんですが、新卒で就職したのはどういった企業だったのでしょうか。
93年に銀行に入社しました。当時の株価が28,000円くらいでバブルの余韻が残るころですね。みんな株価はまた元に戻ると楽観していましたよ。

-株価28,000円って今では考えられない時代ですね。バブルの世の中って話では聞いたことあるけど、一度体験してみたかったな。当時はどんな仕事をしていたんでしょうか。

企業向けの融資担当になり仕事は楽しかったですね。融資先の会社や事業全体のこと。業界のことまで調べて資金を出すことに面白味を感じていました。元々一つのメーカーに入って、それだけの仕事をする気持ちが持てなくて、いろんな世界を見ることができる環境を求めて銀行に入ったので合っていたのだと思います。

-なるほど。いろんな世界をみることで勉強になることもあるだろうし、そこに楽しさを覚える感じは僕も似たようなところがあるので分かります。銀行生活は順調だったようですが、どこかに転機があったのでしょうか。

景気が悪くなっていって融資先の会社の資産の担保評価が下がっていき、債務超過になっていきました。それから毎日のように融資先に対して回収交渉や条件交渉をしていて、「なんだこれ」と思ったんです。最初は上司から言われてやっていたけれど、途中で「なぜ回収の仕事をしているのか」不思議に思いました。返してくれというのがおかしいんじゃないかと。

-確かに銀行側が試算を重ねた上で融資を実行したわけだから、世の中全体の株価が落ち込んでリスクが出てきたから、銀行だけリスク回避するって不思議といえば不思議な話ですよね。業績や利益が上がっていても担保価値だけで見て毀損しているって判断する世界ですもんね。それにしても大変そうな仕事ですね。

回収の仕事自体に疑問を感じていたので精神的にキツかったですね。上司の命令だからとか、銀行員の仕事だと自分を正当化してやっていました。でも、当時の支店長に「おかしいんじゃないか。」と告げたんです。そうしたら「出向だ」と言われてしまいました。入社4年目のときです。

-えーーー。それは驚き!!まるで半沢直樹の世界ですね。世の中そんなことで出向させられる世界があるんですね。うぅん。なんというか大きな組織って色々ありますね。

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ベンチャーとの出逢い

-いきなり出向することになったわけですが、出向って聞くとどっかに飛ばされるイメージしかないのですが、廣川さんはどうだったのでしょうか。

有り難いことに子会社等ではなく、出向で通産省にいかしてくれました。通産省がちょうどベンチャー企業支援に力を入れていく段階で、様々な銀行から若手が集められて仕組みづくりを行いました。担保評価で判断するのではなく、ビジネスとしてきちんと回るかどうかで融資の判断をする仕組みです。

-おぉ!!それは凄いな。国がベンチャー支援をするための仕組みづくりの担い手となったわけですか。世の中どうやってその後の将来に繋がるかなんて分かりませんね。その後はどうされたのでしょうか。

2年間通産省で業務を行い、銀行に戻ってからはベンチャー支援の融資商品を作りました。全国の支店を回って、ドンドン声掛けしましたね。そうやってベンチャー企業への融資を伸ばしていきました。支店審査で間に合わない場合は本部が審査をする仕組みです。ベンチャー企業の融資担当で、かつ審査機能も持っていたので、アクセルとブレーキ両方持っていたんです。

-それはやりがいあるでしょうね。自分たちで作り上げた仕組みを世の中に還元していって、多くの人に喜んでもらえたら楽しいだろうな。しかし、銀行は退職したわけですよね。なぜなのでしょうか。

順調にいっていたのですが、段々と他からねじ込み案件が入ってきて少し嫌気がさしていたんです。そんな時に北海道大学が独立法人化する話がありました。そのタイミングで大学の持っている能力をライセンス化して大学自体が稼げる仕組みを持つための人材募集があったんです。北海道出身でもあったので興味があり、応募して受かったので銀行をやめて北海道大学で働くことになりました。

-なんですかそれ。銀行から大学とはまた一気に違う世界の話ですね。一体廣川さんはどこに進んでいくのでしょうか。

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奥さんがキッカケ

-北海道大学では一体どのような仕事をしていたんでしょうか。

先生方に特許になる技術がないか聞いて回ったり、先生方からも企業に売れそうな特許になるかどうかの相談を受けていましたね。

-なるほど。そもそも大学が企業に特許販売をする世界があること自体知らなかったのですが、なぜ大学の研究が企業に売れるのでしょうか。

大学の先生方の研究は企業ではやらないような基礎研究が多いんです。その研究の成果が企業のニーズとマッチすると世の中に大きな影響を与えるモノになることがありますね。

-なるほど。それは意義深いことですね。それにしてもどうしてまた北海道大学からSFCに行くことになったのでしょうか。

SFCがインキュベーターの募集を新聞に出しているのを妻が見つけて、「応募したら」と言ってくれたんです。元々妻は東京育ちで札幌にあまり友達もおらず、クラシック音楽が好きで音楽関連の仕事もしているのですが、札幌にはあまり仕事もないんですね。そういったこともあって関東に戻ろうかなと考えていたこともあり、ちょうど良い転機だと思ったんです。

-それは奥さん想いで素敵な話ですね。こうやって記事にしようか悩んだくらい素敵エピソードです(笑)でも、そこでインキュベーターの道を進んだから今があるんでしょうね。人生分からないものです。

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VCとインキュベーターの違い

-9年間インキュベーターをやられている廣川さんですが、そもそもVCとインキュベーターの違いってどういったところにあるのでしょうか。

支援をするかどうかを決断する際に、VCだと最後は儲かるか儲からないかの判断をしなければならないですよね。それは銀行も一緒です。そうなると応援したい気持ちがあっても出来ないときも出てきます。インキュベーターはどんなときも最後まで応援する側ですよ。

-なるほど。確かにVCや銀行は投資活動の業務として行っているわけですが、インキュベーターはお金を出すわけではないですもんね。確かに大きな違いです。他にはどのような違いがあるのでしょうか。

銀行が融資をすると債権者になるので、債権者としての権利が発生します。VCによる出資でも株主になるため、大きな発言権があります。インキュベーターは何かの権利があるわけではありません。相手が信用してくれるかどうかにかかっています。相手が信用してくれないと自分たちを採用してくれない関係値で出来ているんですよね。
-なるほど。ようするに反発しあうような利害関係は一切ないわけですね。だからこそ、どのような状況になっても同じ方向を向いていけるのかもしれません。銀行ともVCとも違うインキュベーター。独特の魅力がありますね。

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今後のビジョン

-インキュベーターとして9年間を過ごしてきて次のステージではどんな展開を考えているのでしょうか。

今後やりたいこととしては海外に行きたいと思っています。最近起業家にグローバルな力を求める流れがありますが、グローバルの世界で勝ち抜くためには支援する人もグローバルな力を持っていないとダメだと思います。世界で通用する起業家を育てるためには、世界で通用する支援者じゃないといけないのではないでしょうか。

-なるほど。そりゃそうですね。日本だけではなく世界へと言われるケースはよく聞きますが、支援する側もグローバルの戦い方を知らなければ支援のしようがありませんもんね。他にはどのようなビジョンがあるのでしょうか。

インキュベーターを育てることもしていきたいですね。支援者を支援する制度って今のところ殆どないんです。良い人や良い企業を1,000人1,000社育てるためには、そのための参謀を育てないといけません。

-そうですね。特に学生ベンチャーのように右も左も分からない中で立ち上がっていくためには、支援する大人の存在が必要だと思います。そのように考えるに至ったキッカケは何かあったのでしょうか。

2001年に経産省が発表した大学発ベンチャー1000社計画というものがありました。実際に会社も立ち上がって1800社の実績になりました。ですが、残念ながらほとんどの会社が潰れました。その原因は1000社立ち上げるにあたって参謀が1000人いなかったからだと思っています。だからこそ、インキュベーターの教育についても力を入れていきたいですね。

-そうか。なんだか未来に希望が持てる話ですね。今後廣川さんが支援するベンチャー企業がドンドンと世の中に良い影響を与えていくのが楽しみです!

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僕はこう思った

インキュベーターという仕事。ベンチャー企業を支援するにあたって銀行ともVCともエンジェル投資家とも違う独特な立ち位置の仕事です。僕自身も起業しているので分かるのですが、会社を立ち上げることは出来ても、細かい点や進め方って初めてのことだから分からないこともたくさんあります。そのときに参謀として廣川さんみたいな人が仲間になってくれるのはメチャメチャ心強いですよね。なによりも、たくさんの企業を見ているだろうから、ノウハウや経験が積み上がった状態で支援してくれることは大きな力になります。そして廣川さん自身も面白いですよね。きっと銀行に入ったときに今のようにインキュベーターをやっているなんて、全く想像していなかったと思うんです。でも、自然と自分のやりたいこと、興味があることを選択していったら恐らく天職と考えられるようなインキュベーターになったわけですよね。そう簡単にすぐに天職が見つかる人なんて多いはずがありません。でも、自分の好きなことや、やりたいこと。自分の信念に沿うもの。そういった選択を続けていけば、どこかで見つかるものが天職なのかもしれません。だからこそ、やっぱり妥協せずに自分のやりたいことをやるっていうことが大事なんだなと。目の前に見えていなくても、少しでも好きなことや興味を持てる選択をすべきなんですよね。とっても良い勉強になりました!

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